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![]() 甲斐駒ファン倶楽部第9回例会 |
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| 山のweb仲間、関東に遠征してきたチーム東海のメンバーを迎えた相模大野の焼き鳥屋で、鶏肉を焼く香ばしい煙とはまったく異質の不穏な煙が立ち始めていた。 彼らを迎えたのは、髭の副長さん、そしてKKFCのえび隊員と潤平隊員。 時は9月の下旬。まさに次の週末に久しぶりにKKFCの山行が予定されている時期である。今回のKKFCの山行は栃木奥鬼怒の平家平から山に入り、湯沢の谷筋を辿って広河原と呼ばれる谷底に湧く、幻の自噴温泉を訪ねようという、まるで、テレビの旅番組のスペシャル・バージョンのような企画である。その昔、温泉宿の建設を計画しながら、あまりの山深さにボーリングだけして建設をあきらめ、そのまま放置したといういわくつきの温泉に歩いて入りに行こうというのだ。 こんな企画に対して、不穏な動きを見せるのはKKFCのメンバーの中にはふたりしかいない。まさに今、相模大野の焼き鳥屋で、手羽先に噛りつき、もつ煮込みを口に含んでモグモグ言っているKKFCのインチキ分子、潤平隊員とえび隊員である。 このふたりは、例会があるたびに少しでも楽をしようと、何かしらインチキな作戦を陰でコソコソ画策するのだ。 もともと潤平隊員は、こういった酔狂な企画が嫌いではない。これまでも、ただ新鮮な天丼を食べるためにわざわざ沼津の漁港まで行ったり、美味しい湧き水を汲むだけのために、南アルプス山麓まで車を飛ばしたりしている変人なのだ。 ただし、その根底には「楽な方法で酔狂なことをするのが好き」という、長い年月を経て培ってきた、柳の枝よりも数倍柔らかい軟弱ぶりが、脈々と息づいているのである。 |
| 「なんかさー。今回の企画、だるくな〜い?」 「だよねー。わざわざ山の奥に湧いている小さな温泉に入らなくても、今は温泉付きのオートキャンプ場だってあるしね」 「っていうか、別にキャンプしなくても、オレ、温泉宿でもいいしねー。宿なら食事も作らなくていいじゃん」 KKFCで毎度行う夕食や朝食の支度に、一度も手を出したこともないくせに、偉そうに潤平隊員が鼻を膨らませて言う。 「わたしもさー。わざわざ、テント背負って山に登ってまで地面の穴に湧いた温泉に入りたくないわけ。だいたい女性はわたしだけじゃない?入りづらいわよ。それにわたし、登り坂が大嫌いなのよねー。」 山の仲間が聞いたら、開いた口がふさがらずに食事さえとれなくなるほど呆れたことを、えび隊員がもっともらしい顔で言う。 チーム東海のメンバー、そっちのけでこそこそ話は何時までも続く。 「この際、また潤平兄さんが体調崩しちゃって、宿じゃないと体力が持たないって提案するのはどう?」 えび隊員から、インチキな画策が提案される。 「う〜ん」 しかし、これまで何度となく自分の体調管理の悪さから、他の隊員達に迷惑を掛けている潤平隊員としては、ウソの体調悪化という理由でインチキを実行するのは、さすがに気兼ねがする。それより何より、「実はボク、体調悪くて〜…」なんて甘えて、たとえ企画が宿泊まりに変更になったとしても、いざ宿に着いて酒が入れば、弾けてしまうのは目に見えているので、あっ気なくウソがばれ、それ以後まったく信用されなくなるのは困る。 こんな考え方自体がすでにインチキなのだが、潤平隊員は真面目な顔をして腕を組む。 そしてしばらくしてこう言った。 「そうねえ。まあ、なんとかなるんじゃない?」 腕を組んで難しい顔をしたくせに、何にも考えていない。 インチキな方法さえ考えないなんて、なんてインチキな野郎なんだ! |
| ところが週が明けた月曜日。KKFCの秘密BBSに思いもしなかったニュースが飛び込んできた。 「山に行きたい隊員に腰痛再発。声を出すだけで腰に響くほどの重症!」 腰痛にとって、重いザックを背負う山登りは当然ながら絶対厳禁である。なにより、山行よりも山に行きたい隊員の病状自体が一番心配なのだが、たとえ奇跡的に回復したとしても、わざわざ温泉に入るために、テントを背負って山を登る気にはならないだろう。 潤平隊員とえび隊員は、あらゆる意味を含めて、山に行きたい隊員の病状回復を祈ったのだった。 その願いが届いたのか、いよいよ山行まであと2日となった木曜日の夜、山に行きたい隊員の気迫溢れる書き込みがBBSにあった。 「腰痛は回復に向かっています。絶対行きます!」 その書き込みを見て「さすが、KKFC最強の実力者!」と小躍りした潤平隊員であったが、しかしこれは気迫の出し過ぎである。文章の中のどこを探しても、宿だとかオートキャンプだといった言葉は出てこない。どうみても山に登って温泉に入るという目的に対して、ほとばしり出た気迫である。この気迫は、インチキ分子にとってはまさに逆風そのものだ。 「山に行きたいさんにも困ったものだ…」 パソコンの画面を見ながら、溜息交じりに腕組みをする潤平隊員であるが、一番困ったものなのが自分であることにいまだに気づいていない。 そんなふたりのかもし出す空気を察したのか、いまやKKFCの幹事長役を務めるケイ隊員が救いの手を差し伸べた。実家がある岩手に帰る山ヤ隊員。そして直前になって仕事が入り、やむなく参加を断念することになったタカダ隊員とかば隊員を除き、けっきょく今回は計5名がKKFCの温泉山行に参加することになっていた。 「うちにオートキャンプ用の大きなテントがあるから、それを持っていきませんか?5人ならば、それで充分対応できると思いますよ」 その言葉に潤平隊員がすぐに飛びつく。 「えっ!?本当にテント持って行かなくていいの?」 「いいですよー。箸と今回のメニューのお好み焼きにつける、ソースとマヨネーズさえ持ってきてくれれば」 「そうかー。テント持って行かなくていいのかあ」 気持ちがちょっと揺れる。しかし、よく考えてみれば、今の山岳用テントはたとえ2人から3人用でも2キログラム以下。対してオートキャンプ用の大型テントは10キログラム以上ある。単純に5人で分担してもひとり2キログラム以上になってしまうのだ。つまり自分でテントを持っていくより重くなってしまうのである。 さすがにえび隊員はそのことに気がついていた。 参加人数は5人。人数が少なくなったのは寂しいが、しかし、これはインチキ分子にとっては思わぬ追い風なのである。世は多数決の世界。つまり出発前夜の勢力図は山派3名に対して、まったり派2名となったのだ。1名転べばこっちのものだ。逆転勝利を狙って解散総選挙に乗っかったインチキ政党のような気持ちになって、えび隊員は山行当日、最後の賭けに出ることにした。 一方、潤平隊員は「どうせ僕が行くんだから、雨で山は中止さ」などと自ら造った大船に乗ったつもりで、船酔いする前に酒に酔っていたのであった。 |
![]() あまりに見事な紅葉に車を止めてシャッターを押す |
さて山行当日。 栃木県の今市に集合したKKFCの隊員たちは スーパーで食事と酒の買出しをした後 2台の車に分乗して 一路奥鬼怒の平湯平を目指す。 きむひろ隊員と山に行きたい隊員の群馬組が先導し それを潤平隊員とえび隊員を乗せた ケイ隊員運転の通称ボロン号が追う。 鬼怒川の山々は この時期見事に色づいており ついつい車を止めて 山に向かってカメラを向けたくなる。 この日の鬼怒川は細かい雨が 降ったりやんだりする生憎の天気であり 薄く流れる霧のせいで 輝く錦とまではいかないが それでも色とりどりの紅葉が山の深さを 際立たせている。 |

| 観光客で賑わう大笹牧場に寄り道し 今市のスーパーで開催されていた全国駅弁大会で 目を皿のようにして吟味した末に 手にいれた駅弁を各々が広げる。 たとえどんなところに行っても こんな風にピクニックに来たような のんびりした雰囲気になってしまうところが KKFCの特徴である。 ホームページ開設組が レポートの題材用に すかさず駅弁にカメラを向け 接写でシャッターを押す。 周りから見たら さぞかし一種異様な光景だろう。 |
![]() 大笹牧場で楽しい昼食の時間。何故か全員駅弁 |
| 写真撮影、牧場での昼食と、あちこち寄り道しているうちに何時の間にか昼を過ぎてしまった。 墳泉塔の登山口がある奥鬼怒のドン詰まり「平湯平温泉」の一軒宿までは、まだだいぶ距離がある。再び2台の車に分乗し、まずは平湯平温泉の手前にある川俣温泉を目指し、峠を越え、鬼怒川を谷底に見てクネクネと曲がる細い林道に入る。潤平隊員にとって忘れようにも忘れられない思い出のある恐怖の林道である。 今から20年近く前の12月、この林道を通って川俣温泉に宿泊した潤平隊員は、一晩のうちに、膝上まで積もるという予想だにしなかったドカ雪に見舞われ、必死の思いでこの林道を下ったのである。それまでチェーンはおろか雪道さえ走ったことがなかった潤平隊員は、この細い雪の林道で3度スリップし、そのうち2度は谷に半分落ちかけた。やっとの思いで日光の街まで下りてきた時には、極度の緊張から、胃に潰瘍が出来たほどだった。 |
| さて潤平隊員にとって、トラウマにさえなっているこの林道に車が入った頃から、えび隊員と潤平隊員のインチキ攻勢が始まった。 真面目な顔でボロン号のハンドルを握り、真っ直ぐ前を見て運転するケイ隊員に、ふたりの悪魔がささやき続ける。 「あのさあ。こんな風に雨が降ったり止んだりの天気の中を登っても、きっと楽しくないと思うよ」 「僕が雨男なのは知っているよね。今こんな感じじゃあ、登山口に着く頃には土砂降りじゃないかなあ。この先、道ももっと狭くなるしね。実は昔、この道で僕は谷に落ちそうになったことがあるんだ」 「雨の中で温泉に入ったって仕方ないしねー。大きなテントも持ってきたし、オートキャンプって手もあるよね」 「あっ!いま、『この先にオートキャンプ場有り』っていう看板があった!」 「この辺は宿は、美味い川魚を出すんだよねぇ…」 インチキ分子にしてみれば、ひとり転べば形勢逆転である。懸命な多数派工作だ。 「湯沢って、けっきょくは鬼怒川の支流でしょ?やっぱりテント張るなら本流よ。本流!」 もうなんだか、わけのわからないことまで言い始めた。 ケイ隊員は、そんなささやきが聞こえないかのように、まっすく前を見てハンドルを握り、前を行く山に行きたい隊員の車を追う。 |
![]() インチキ隊の攻撃に耐えてアクセルを踏むケイ隊員 |
「それにさあ…」 助手席に座るえび隊員がささやき続ける。 後ろの席で潤平隊員が 必殺の雨乞い呪文を唱え続ける。 平湯平温泉脇の駐車スペースに車が到着するまで この姑息なインチキ誘惑工作は続いたが ケイ隊員の意思は強く とうとう最後まで 首を立てに振ることはしなかった。 恐るべし鉄の意志を持つ男、ケイ隊員! |
![]() コルセットをしてまで…。なぜ君は山に行くのか ![]() 「残念でした♪」インチキ隊を振り返りケイ隊員が笑う |
駐車スペースの目の前に建つ 平湯平温泉の一軒宿 「こまゆみの里」は男女別にひとつの内風呂と ふたつの露天風呂を持つという 風情溢れる温泉旅館だ。 「ここでもいいんだけどなあ。」 「空き室有りって書いてあるよ」 まだ言ってる。 そんなふたりを余所に 3人の隊員たちがテキパキと 装備を整える。 着替えを始めた 山に行きたい隊員の腰には なんとコルセットが巻いてある。 いったい何が 彼をここまで駆り立てるのか。 やはり『山に行きたい』などという この長ったらしいハンドルネームは この男のためにあるとしか思えない。 |
| けっきょくオートキャンプ用の 大型テントはあきらめ 小ぶりな山岳用テント3張りを背負って KKFCの一同は 湯沢広河原の野湯を目指して山道に入った。 もちろんテントを背負うのは 正統派KKFCの隊員3人である。 湯沢墳泉塔の看板に導かれて 整備された階段を下る。 腰痛を押して参加した 山に行きたい隊員がリードし その後ろきむひろ隊員、潤平隊員 えび隊員と続いて ケイ隊員が最後を締める。 |
![]() 墳線塔登山口の階段を下りる隊員たち |
![]() 紅く燃える山を目指し吊り橋を渡る |
山腹についた階段を下ると 鬼怒川に掛る 長く立派な吊り橋が現われ その先が紅く燃える秋の山に 真っ直ぐ伸びている。 小雨交じりの空は鬱陶しいが この情景はなんとも魅力的である。 ついさっきまで ぶうぶう不平を言っていたはずの 潤平隊員の心も 少しずつ山に向き合い始めていた。 しかしこの後 雨脚はきっと強くなるのであろう。 なぜなら雨男の効力は 降って欲しい時ではなく 降って欲しくない時に発揮されるからだ。 出発前の山行中止をもくろんだ頃が 降って欲しかった時だとすれば 歩き始めてもう行くしかないと決めた後は 降って欲しくない時だからである。 |
| それにしても この山の紅葉の素晴らしさはどうだ。 読んで字のごとく 紅葉といえば「紅く染まる」という イメージが強いが しかし実際に山を染めているのは 多種多様な色と形なのである。 紅が黄色を引き立て 黄色を朱色が引き立てる。 そしてその根底には すべての色を浮き上がらせる 山の緑が根付いているのだ。 |
![]() 思わず足を止めて錦の森を見上げる |

![]() 一服つけてくつろぐきむひろ隊員。山男の笑顔だ |
渡渉点の手前で ザックを下ろしイップクつける。 気のおけない仲間と山を歩き 山で足を止めた時に見せる 仲間の笑顔は何時だって魅力的だ。 きむひろ隊員と潤平隊員が ポケットからさっそく タバコを取り出して火を点ける。 山の雨に濡れた精練な空気の中で 自らの肺を汚すこの行為は一見自虐的だが タバコを吸う者にとっては より山の空気の新鮮さを 感じることが出来るという 理不尽な言い訳が成り立つ。 |
| 渡渉点の多くには よく整備された丸太の橋が掛けられているが 広河原の手前に差し掛かったところに 膝まで浸かる渡渉が待っている。 水を異様に怖がり 沢登りなどもってのほかと 公言してはばからない潤平隊員は 学生時代に仲間と購入したヨットが 葉山沖で転覆し そのまま海に流されて遭難した経験が トラウマになっているものと 最近まで思い込んでいたが 父の話によれば 物心つく前にすでに西伊豆の海で 一度溺れていたらしい。 湯沢の川は深くはないが 源泉に近いせいか 川底の石がヌメっており 腰を引かせた潤平隊員は ものの見事に足を滑らせて転倒した。 |
![]() 渡渉地点に差し掛かると広河原は近い |
![]() 紅く燃える岩肌に囲まれて広河原が広がる |
先頭を行く 山に行きたい隊員の 「ああ、着いたよ、着いた」という声が山に響き 沢の先に目を向けると 河原に煙が立っているのが見えた。 湯沢で最初に現われる野湯 広河原の湯に到着である。 気がつけば雨は何時の間にか上がっていた。 河原の岩が抉れており そこに源泉であることを誇示するかのように きつい硫黄臭の湯が注がれていた。 温泉のすぐ横に広がるテント場は 残念なことに先着していた 若者グループの大型テントに占有されており すでにアルコールが回っているらしい 若者たちが嬌声を上げていた。 KKFCのメンバーたちは ブルーシートが敷かれた温泉を 一度覗き見ただけで そこよりさらに奥に広がる 川沿いの草地にテントを張った。 |
| あちこちでのんびり道草をしすぎたせいか テントを張り終えた頃には 湯沢の谷には すでに陽の光りはなく 隊員たちは缶ビールで慌しく乾杯をして すぐに宴会の準備に入った。 今宵のメニューは 毎度お馴染みの大鍋に 今回初挑戦のお好み焼きと 韓流ブームを反映したチジミである。 ケイ隊員自らがボッカしてきた オートキャンプ用の大型の鉄板を広げ 暗闇の中、ヘッデンの灯りを頼りに お好み焼きの具をこねる。 手際よくメンバーが調理を進める横で 潤平隊員は 「おれは広報担当」などと言いながら 呑気にカメラを構えて歩き回っている。 ずいぶん楽な役回りである。 雨を含み そして夜風に湿気た枯れ木は なかなか火を受け付けず 山に行きたい火付け改めが 珍しく苦労している。 源泉を含んだ川の水は温かく 缶ビールは一向に冷えなかった。 |
![]() 鍋といえば山に行きたい火付け改めの出番だ ![]() えび隊員め!たまねぎ剥いただけでいなくなりやがった |
![]() キャンプ場で焚き火の炎を見ると落ち着くのはなぜ |
![]() ボッカした鉄板にお好み焼きを乗せる |
| とうとう最後まで 勢いを増すことのなかった 焚き火の上から鉄板を上げて 山岳用バーナーであらためて 焼き直したお好み焼きは 闇夜に隠れ そしてお洒落に掛けられたマヨネーズで 一見完璧に焼けたように見えるが よくよく見れば真っ黒焦げである。 それでも仲間と登り 仲間と飲みながら 笑顔をおかずにつまんでみれば それはそれで美味しく感じるから 不思議なものだ。 |
![]() 完成したお好み焼き。なんとも微妙な出来具合 |
![]() 例会も9回目となれば鍋の方は手馴れたものだ |
![]() 大活躍だったケイ隊員が夢の世界へ旅出つ |
| 最後はほとんど無理矢理のように 全員でチジミを胃の中に押し込み 毎度お馴染みになった大鍋を平らげる。 今回の鍋は豚汁である。 「野菜がシャキシャキして美味しい!」と 誰かが吼えたのはご愛嬌で さすがにこれだけ何べんも鍋を作り続ければ 自然とメンバーの口にあった味が出来上がってきて みんな満足顔で具を口に運んでいる。 KKFCをまったり化させるという画策に 今回も失敗した潤平隊員が その仕返しとばかりに 得意の怪談ネタを披露したのはいいが 一番怖がったのが 今晩ひとりでテントに寝ることになった 盟友のえび隊員という 洒落にならない結末になって 抜いた刃の収めどころがなくなる。 いささか心もとない焚き火の傍で コクリコクリとやっていたケイ隊員が 何時の間にか ブルーシートの簡易ターフの下で いびきを掻きはじめたのを合図にして 今夜のKKFCの宴会は幕引きとなった。 |
![]() 広河原の朝。今日は天気もいいようだ |
さて翌朝 … 散々インチキなことを画策した 罰を受けたかのように 幻なのか現実なのかわからないほど リアルな夢を断続的に見続けて あまり熟睡できなかった潤平隊員が 居候した山に行きたい隊員のテントから顔を出すと すでに他のメンバーは ブルーシートの簡易ターフの下で輪になって コーヒーを啜りながらくつろいでいた。 見上げる空は 昨日の雨空が嘘のように晴れ渡っており その光に当てられた山の彩りが キラキラと輝いている。 生あくびをしながら テントから這い出した潤平隊員の吐く息は タバコをくわえていないのに すでに白かった。 |
| 昨晩食べ残した豚汁に うどんを入れて味噌煮込みにし みんなでハフハフ息を吐きながら 頬張って身体を温め 朝から缶ビールで喉を潤して 青い空と見事な紅葉を のんびりと見渡す。 テント場全体に 潤平隊員が一番好む まったりとした 気だるい空気が澱んでいる。 ひとり元気なケイ隊員が テント場から約1.3キロメートル先にあるという 自然が作り出したモニュメント 湯沢墳泉塔を目指そうと 張り切っている。 しかし その声に呼応するメンバーは誰もおらず 最後には散歩をせがむ犬のように 目の前に登山靴まで置いて哀願した きむひろ隊員にもソッポを向かれ ひとり寂しくヒザを抱えて 背中を丸めるのであった。 |
![]() きむひろ隊員に墳泉塔同行をせがむケイ隊員 ![]() 誰にも相手にされずに膝を抱えていじけるケイ隊員 |
![]() 紅葉に囲まれ河原に湧く温泉 |
まったりした空気の中で すっかり陽が登り 谷底のテント場が ようやく温まり始めた頃になって KKFCのメンバーは やっと重い腰を上げ テントを撤収して 昨日入りそびれた 広河原の野湯に向かった。 ブルーシートが敷かれた 野天風呂の傍らには 相変わらず若者たちの 大型テントが張られていたが えび隊員を除くKKFCのメンバーたちは かまわずパンツを脱いで 野趣満点の源泉に飛び込んだ。 あれほど 面倒臭がっていたはずの潤平隊員も 何時の間にか 嬉しそうに缶ビールを傾けている。 |
| 青い空の下 紅葉に囲まれて 気のおけない 裸の男たちが 朗らかに カンパイをコールした。 |

【追伸】 車を置いた駐車スペースに戻り 目の前に建つ「こまゆみの里」で汗を流しことにして 身支度をするえび隊員に ケイ隊員がキャンプで残った食材を渡した。 「お土産に持っていってくださいな」 受け取ったえび隊員がインチキ仲間の潤平隊員に相談する。 「車の中に置いたままお風呂に行ったら痛んじゃうかなあ?」 「そうだね。外の方がいいかもね。バンパーの下辺りに置いておけばいいんじゃない?」 「うん。そうだね。そうしよう」 … しか〜し !! 鼻歌気分で温泉に入った途端 インチキコンビはそんなやり取りを 当たり前のようにすっかり忘れてしまう。 ケイ隊員の運転するボロン号に揺られ 高速道路を乗り継ぎ 無事たどり着いたえび隊員宅で えび隊員が首を傾げる。 「あれ〜。キャンプの食材、どこに置いたっけ?」 「僕はちゃんと渡しましたよ」 ケイ隊員が訝しげに言う。 「渡されたんなら何処かにあるでしょう」 まるで人ごとのように潤平隊員が言う。 人の良いケイ隊員がトランクまで開けて 食材の入ったビニール袋を探す。 「ありませんよぉ」 「ケイさんから受け取った記憶はあるんだけど その後どうしたっけかなあ?」 首を傾げるえび隊員。 「助手席の下にでも転がってるんじゃね〜の?」 あくまで人ごとの潤平隊員 … 「おかしいなあ」 … 「探せばあるって」 … 最後まで インチキなふたりであった。 |

